あれ? 先週も同じサプリの箱が届いていなかったっけ……?」
実家に帰省した際、玄関やリビングに見覚えのある段ボールが山積みになっているのを見て、背筋が凍るような思いをしたことはありませんか?
認知症が進行すると、「自分が注文したことを忘れてしまう」「すでに家にあることを認識できない」といった症状から、同じ商品を何度も繰り返し通販で買ってしまうケースが多発します。
筆者である私も、数年前に実家の母が某健康食品を毎週のように電話注文し、部屋中が同じボトルで埋め尽くされた経験を持つ一人です。当時は「なんでまた買ったの!?」と感情的に怒ってしまい、母を傷つけ、自分も自己嫌悪に陥る日々でした。
この記事では、そんな私の苦い実体験と、多くの介護家族が実践して効果があった「通販トラブルを根本から防ぐ5つの具体策」を実話風に分かりやすくまとめました。
大切な親の財産と尊厳を守るために、家族ができることから一歩ずつ始めてみましょう。
1. 怒るのは逆効果!まずは認知症の「買い物の心理」を理解する
対策をお伝えする前に、とても大切な心構えがあります。それは「本人は悪気があって買っているわけではない」ということです。
「何度も届く」実話の背景
私の母の場合、テレビのBS放送で流れる健康番組(インフォマーシャル)がきっかけでした。「今なら半額!」「足腰がラクになる!」というフレーズを見るたびに、母は新鮮な気持ちで「これは私のために必要なものだ!」と感動し、受話器を握っていたのです。3日前に同じものを注文した記憶は、脳の特性上、すでに消えてしまっていました。
ここで「もうあるでしょ!」「なんで同じものを買うの!」と責め立てると、本人は強い不安や不快感だけを記憶に刻み、かえって頑なになったり、家族に内緒で買い物を続けようとしたりします。
まずは「困った行動」ではなく「病気の症状」として受け止め、感情的にぶつからない環境づくりへシフトしていきましょう。
2. 家族が今すぐ導入すべき「5つの実践的通販対策」
それでは、具体的に効果のあった5つのアプローチを、難易度順に紹介します。
① 「定期購入」の罠から抜け出す!解約と停止の手順
最も家計を圧迫するのが、1回だけのつもりでボタンを押したら、実は「毎月お届けの定期コース」になっていたというパターンです。
- 購入履歴や届いた伝票を確認する まずは届いた段ボールの送り状(伝票)を見て、販売元(会社名)、電話番号、注文番号を確認します。
- サポートセンターへ即座に連絡 家族(子供)からカスタマーサポートへ電話を入れます。その際、「購入者本人が認知症を患っており、正常な購買判断が難しい状態であること」を正直に伝えましょう。多くの大手メーカーや良心的な会社であれば、スムーズに定期購入の解約・一括停止の手続きに応じてくれます。
- 今後の一切のDM・勧誘停止を依頼する 解約手続きと同時に、「今後、本人宛てにカタログやダイレクトメールを送らないでほしい」「勧誘の電話をリストから外してほしい」と合わせて依頼するのが鉄則です。
② クレジットカードの管理と「お買い物枠」の制限
ネット通販やテレビ通販で、クレジットカードが登録されたままになっていると、本人がワンクリック、またはカード番号を伝えるだけで簡単に決済できてしまいます。
- カードの保管場所を変更する 可能であれば、クレジットカードは家族が預かり、本人の財布には必要最低限の現金(数千円程度)だけを入れておくようにします。
- 家族カードやデビットカードへの切り替え どうしても本人がカードを持ちたがる場合は、利用限度額を極端に低く(例:月1万〜3万円など)設定した家族カードや、口座残高以上の買い物ができないデビットカードに変更するのも有効な手段です。
③ Amazonや楽天市場の「注文履歴確認」とアカウント共有
パソコンやスマホを使いこなしていた親御さんの場合、ネット通販での重複買いが目立ちます。
- アカウントのパスワードを共有してもらう 親のAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのログイン情報を家族も共有し、いつでもスマホから「注文履歴」をチェックできるようにしておきます。
- 置き配や通知設定の活用 注文が入ったら家族のメールアドレスにも通知が飛ぶように設定したり、配送状況を追跡できるようにしておけば、万が一重複して注文されても、発送前ならキャンセルが可能です。
- 「ワンクリック購入」の解除 Amazonの「1-Clickでの注文」などは非常に便利ですが、認知症の誤操作を誘発します。必ず設定をオフにし、購入確定までに複数のステップを踏むように設定を変更してください。
④ 最も厄介な「電話注文」への対策
テレビ通販を見てそのまま電話してしまうケースは、ネット通販よりも対策が難しく思えますが、固定電話の設定次第で防ぐことができます。
- 「ナンバー・ディスプレイ」と「迷惑電話防止機能」の導入 登録していない番号からの着信に対して「この通話は録音されます」とアナウンスが流れる電話機に変えるだけで、怪しい業者からの勧誘電話は劇的に減ります。
- 発信制限(国際電話や特定のダイヤル)の活用 電話会社(NTTなど)のサービスを利用し、特定の番号やフリーダイヤルへの発信を制限できないか相談してみるのも一つの方法です。また、電話機の横に「通販の注文は一度〇〇(子供の名前)に相談すること」と大きめの紙で貼り紙をしておくのも、初期の認知症には効果があります。
⑤ 困ったときの駆け込み寺「消費生活センター」へ相談
家族だけでは解決できない場合や、悪質な業者に目をつけられて高額な契約を何度も結ばされてしまっている場合は、迷わず専門機関を頼りましょう。
- 消費者ホットライン「188(いやや)」 局番なしの「188」に電話すると、最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してくれます。
- クーリング・オフ制度や「契約取消」の相談 通常、通信販売には法律上のクーリング・オフ制度は義務付けられていませんが(各会社の特約による)、「認知症による意思能力の不十分さ」を理由に、消費者契約法などに基づいて契約を取り消すことができるケースがあります。専門の相談員が間に入ってアドバイスをくれるため、一人で抱え込まずに相談してください。
3. まとめ:環境を整えたら、親の「寂しさ」にも寄り添う
認知症の親が同じものを何度も買ってしまうトラブルは、単なる「物忘れ」だけではなく、実は「寂しさ」や「誰かとつながっていたい」「まだ自分はしっかりしていると証明したい」という不安の裏返しであることも少なくありません。
電話口のオペレーターが優しく対応してくれたから嬉しくて買ってしまった、という実話も本当によく耳にします。
物理的な対策(カード管理や電話の設定など)を静かに進めつつ、日頃からこまめに連絡を取ったり、実家に顔を出して話を聴いてあげる時間を増やすことが、最大の通販防止策になることもあります。
まずは今日できる「届いた段ボールの送り状チェック」から、一歩を踏み出してみませんか?
